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Monochrome Circus 33周年記念公演 クロニクル  [ダンス/レビュー]

京都を拠点に活動するダンスカンパニー・Monochrome Circusが活動開始から33年を記念した公演を開催した。本来は2023年に開催を予定していたが、コロナ禍を避ける形で2024年3月に実施した(公演開催にあたっては、クラウドファンディングを実施するなど改めて観客・支援者を意識した企画運営を行っている。33年という長い期間の活動継続の裏には、こうした企画・実行力の強さも必要なのだろう)。

公演は2部構成で、第1部は1990年から2005年までの活動期間の中から最初期作品の復元や「収穫祭」シリーズを軸に上演。第2部では1999年から2006年までの活動期間の中からオムニバス形式で5作品を上演した。ユニークだったのは、作品を並べていくだけでなく、元メンバーの山下残と代表の坂本公成が舞台上手と下手に分かれて立ち、かけあいをしながら作品紹介をしていく流れだ。カンパニーの歩みを振り返りながら、当時のエピソードなどが軽妙なトークとして挿入される。往年のファンにとっては記憶を蘇らせてくれるきっかけになり、上演当時を知らない観客にとっては作品をみるにあたっての補足になっていた。私自身がMonochrome Circusの作品を鑑賞するようになったのは2007年頃からのため、第1部で紹介された作品の多くは未見。大変貴重な機会だった。


<第1部>
『#1~7』1990~94 
演出:坂本公成 
出演:坂本公成・山下残・山瀬茉莉・山中透(3日)・野村誠(4日)

山下残さんや野村誠さんがMonochrome Circusの活動に参加されているのも知らなかった・・・。

『収穫祭’97』より ’97
振付:坂本公成・森裕子
出演:秋山レナ・中村太勇・星山有・ヘドゥン世眞・小代美遥・岡野桜子・ヘドゥン丹愛・西山瑚々・
   近藤沙羅・森川更紗・森裕子

いろいろな場所へ自分たちが出かけ、その先で踊り、食事や寝場所を提供してもらうという旅の中で培われたものが作品になっていくことがとても興味深く、こうした経験がカンパニーの根底にあったことを改めて知った。

『収穫祭』プロジェクト ’96~’05
出演:飯田茂実・荻野ちよ・小倉笑・inesik、坂本公成・森裕子
 『逆上がり』
 『秋やねえ』
 『君をのせて』
 『童神』
 『広い広い野原に』
 『寅さんのテーマ』
 『マラカスダンス』
 『黒猫のタンゴ』

出演者がわいわい会話しながら、次々と短編を繋いでいく楽しいリレー形式。やはり飯田茂実さんがMonochrome Circus参加されていたことを知らず・・・。参加するアーティストやダンサーの個性豊かな粒立ちが気持ちいい。許容される個性ではなく、個性が1つの作品の軸になるということの力強さが爽快。

『夏の庭』より「夏なんです」’96
振付・出演:坂本公成・森裕子

豊田市で企画に関わった『農村舞台アートプロジェクト』で踊って頂いた作品でもあり個人的に思い出深い作品。公成さんが舞台中央に立ち、裕子さんが円を描きながら駆けめぐるシーンは、過ぎゆく美しい夏を見つめて佇む人の姿のよう。少し切なさも感じる作品。

<第2部>

『HUSAIS』より抜粋 ’99
振付:エラ・ファトゥミ、エリック・ラムルー(仏)
出演:合田有紀・野村香子

2017年までMonochrome Circusに所属していた合田さんと野村さん。2015年にはゴーダ企画を共同で立ち上げている。所属当時、私は2人はタイプの異なるダンサーだと感じていたが、今回のデュオをみて、2人が描く作品世界の精度の高さに感激した。体格差ある2人なのに、ブレずにぴったりと踊る緻密な動きが見事で、舞台の漆黒さがどこまでも深くなっていくように感じられる・・・。何度でもみたい作品だった。

『泡―沫』より抜粋 '00
振付:坂本公成 
出演:inesik、坂本公成、森裕子

『SKIN/ephemera』より抜粋 '01

inesikさんは初見。元ボーイレスクダンサーという経歴を持ち、Monochrome Circusではコンテンポラリーダンサーとして活躍されていたよう。才能豊かなアーティストが参加し、そこから新たなステージをめざせる点もMonochrome Circusの魅力であるように思う。

『怪物』より抜粋 '05
振付:坂本公成
音響:真鍋大度(Rhizomatiks)
出演:斉藤綾子

“レパートリー”といえる作品をいくつ持っているかということは、優れたカンパニーであることの証であるようにも思う。再演に耐えることが出来る普遍性や、踊り手によって魅力の幅を拡げることが可能な作品こそがレパートリーとして残っていくように思うからだ。この『怪物』については初演を佐伯由香さん、その後野村香子さんが踊るのをみて、今回は斎藤綾子さんの『怪物』をみることができた。斎藤さんの『怪物』は、一見何気なく過ぎているかも知れない日常の、より内面に巣くう狂気のようなものを感じた。じりっとした怖さを感じる作品に仕上がっていたように感じる。こういうテイストは個人的に好み(笑)。

『きざはし』'06
振付:坂本公成+森裕子
出演:ならさきゆきの、森脇康貴

この作品も個人的に思い出のある作品。ダンス批評を学び始めた時期で、JCDN主催のダンス批評講座に参加している時に坂本公成・森裕子バージョンを課題作品として拝見していた。今回の公演で公成さんが何度かくり返し発言していた「継承」という言葉は非常に大切だと改めて感じる。レパートリーとして新たなダンサーに手渡された作品は、また違う角度でその核心をみせてくれるし、鑑賞者のみる力の未熟さを補うことにもなる。また、踊り手が変わることにより作品の核心そのものにも新たな意味や意義が追記されいくおもしろさもあると感じる。ならさきゆきの・森脇康貴バージョンをみて、自分自身の初見の感覚と新たに感じた魅力との両方を味わいながら、この公演全体を思い返すことができた。こういう機会は私自身にはあまりなく、意義深かい。

これからも、このカンパニーから新鮮な作品が生み出されること、レパートリーが踊り継がれていくことを敬意をこめて願う。


■公演日時:2024年2月3日(土)19:00〜/2月4日(日)14:00〜

■会場:京都府立文化芸術会館

https://monochromecircus.com/lp/chronicle/

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