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KIDD PIVOT REVISOR  [ダンスプレビュー]

ここ数年、大好きなダンス作品をみるという機会が激減してしまい、人生の感触まで変わってしまったかのような日々を送っていました。こう書くと大げさに聞こえてしまうかも知れないのですが、私にとっては本当にそんな状態でしたよ(笑)。なんだかスポッと時間が抜けてしまったような気がしています。


そんな私が地元・愛知で海外からの招聘作品をみることが出来る機会が巡ってきました。カナダ・バンクーバーを拠点に活動するダンスカンパニー、KIDD PIVOTの来日公演。振付家はクリスタル・パイト。パイトはオランダのNDT、ロンドンのサドラーズ・ウェルズ劇場、カナダのナショナル・アーツ・センターのアソシエイト・アーティストも務める話題の振付家で、人間の心の中で起きる複雑なテーマをもとにダンスと演劇を両立させた独自な世界観をみせてくれるようです。

今回の『REVISOR』という作品はウクライナ出身のニコライ・ゴーゴリが書いた戯曲を元につくられていますが、作家は腐敗した社会への批判的メッセージを込めていたといいます。それが戯曲が演劇として上演された当時、作家の意図とは逆にコメディとして人気を博してしまったというエピソードがあるそうです。あらすじは、ある町に検察官が訪れるという噂が流れるも、検察官ではない人物を間違えたまま、自身の汚職が発覚するのを恐れた高官たちが無様な姿を露呈するというもの。このエピソードから演出家のジョナサン・ヤングは本作品のタイトルを『Revisor』=公文書などの校正をする校正員(下級公務員)としたそうです。これは、元の状態を校正可能なものとしてとらえ、腐敗したシステムに対してどのような変化を起こせるのかという問いかけを軸としているとのこと。ちょっとシニカルな感じになっているのが興味をそそられます(…私、素直じゃないから:笑)。

個人的な関心になるかも知れませんが、普段私たちは恐らく誰しも心の中に隠している、人に知られたくないこと、知られてしまうと責められてしまうこと、悪や罪とジャッジされてしまうものを抱えていると思います(え?私だけ?!)。それがある日、暴き人がやってくると知らされたとしたら…やはり心穏やかではなくなると思うのです。葛藤し、起きてもいないことで混乱し、何とかごまかしたり、逃れられないか迷走したり…そんなことを思うと、『REVISOR』は、一気に他人ごとではなくなるのです。まるで追い詰められた自分を見ているような気分にさえなるかも知れません。。

本作品は、演劇とダンスが両立された稀有な作品とのこと。言葉は古い英語で意味をとることも難しいようなものであるといいます。ただ私たちはその古い言葉の持つ響きやトーンを耳や身体で感じつつ、録音されたセリフとぴったりと調子をあわせて動く唇の震えを目にし、言葉では表されないものをダンスの中で体感していきます・・・もう、作品が上演される時空間そのものに取り込まれそうな気がして身振るいしちゃいますね;

もちろん、そんなことが出来るのは鍛えられた身体と洗練された動きができる優れたダンサーだからこそ。海外ダンサーの動きは日本人の私には、やはり非日常ですし、ダイナミックに感じます。そんなことも加味されて、『REVISOR』、めちゃくちゃ楽しみです。


最後はいつものように言葉が乱れてきましたが(苦笑)、やはり、ダンスがみられる日々は幸せだなって思います。明日は仕事帰りに劇場へ・・・。ああ、このパターン、何年ぶりでしょうか。


<KIDD PIBOT 『REVISOR』>
愛知公演:
■日時:2023年5月19日(金)19:00-
■会場:愛知県芸術劇場 大ホール

★詳細は下記でご確認を★
https://www-stage.aac.pref.aichi.jp/event/detail/000961.html#000961
http://kiddpivot.dancebase.yokohama/


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