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ジャン=リュック・ゴダール 遺言 奇妙な戦争 [映画]

その昔、私はデザインを学ぶ学生でした。ありがちな課題として“ポスター制作”に取り組んだ時、これまた出会いがち(笑)なのが、ヌーヴェルヴァーグの映画作品たち。フランス語もわからないし、ストーリーもわからない状態であっても、ヴィジュアルのおしゃれ度の高さはポスター素材として最高のモチーフだと思いました。特に、ジャン=リュック・ゴダール監督の『勝手にしやがれ』(1960)や『気狂いピエロ』(1965)はタイトルも含めて『なんておしゃれなの!?』と、デザイン学生のハートを鷲掴みにするものでした(笑)。

社会人になり、アートやダンスの評論の世界に足を突っ込むと、旅先でわけもわからず“展覧会”と名の付くものには予習なしに飛び込んでみるという、これまた学生時代の姿勢を踏襲した性癖でゴダールとの再会を果たしました。大阪で開催されていた『堂島リバービエンナーレ2019』は、ゴダールの『イメージの本』(2018年)からインスパイアされた内容の展示でした。時間があまりなく、ざっと会場を一巡したものの、あまり理解することも出来なかったため『イメージの本』のDVDを購入して会場を後にしました。でも、会場全体で感じていた断片的な映像や音のコラージュがつくりだす独特なイメージは何となく“圧が強く”(苦笑)て、旅から戻っても開封すらしないままでした。当時の私には見るのを躊躇するような感覚があったのだと思います。

そしてそして(何て長い前置き!)つい先日、ゴダールの遺作といわれる『ジャン=リュック・ゴダール 遺言 奇妙な戦争』が上演されるのを知り、出かけることにしました。なんだかんだ言っても、ゴダールの映画作品を映画館でみることは初めてでした(汗)。ゴダール自身は2022年9月、生前の宣言通りスイスで尊厳死を遂げていますが、20分という短編の本作は彼の作品スタイルに貫かれた作品ではないかと感じました。次々と展開する映像は物語として作品を回収しようとする観客を否定するように、映像も音も断片的。字幕も画面右と下に表記されるので、フランス語がわからない私には文字を追うことも難しい状況です。この状況、まるで感覚の暴力にさらされたような心境になるのですが、見終わる頃には、その独自な世界感にヤラレています(笑)。すごい才能なんだなぁと、遺作をみてようやく体感したようです。

さて、『ジャン=リュック・ゴダール 遺言 奇妙な戦争』を見たその後、改めてゴダールを知りたいと思い、数年を経てようやく『イメージの本』(2018年)のDVDを開封しました。内容を知り、驚きました。作品では、ホロコーストとイスラエルとパレスチナの紛争への怒りが描かれていたのです(・・・内容も確認せずに購入してた;)。2019年当時、日本ではあまりイスラエルとパレスチナ紛争についての報道も少なく、それほど注目されていなかったようにも思います。日本にいる私はようやく今年になってこの紛争の悲惨さを知り、愕然としているような世間知らず。ゴダールが感じた怒りをいまさらながらに受け取ったように感じました。もっと早く開封しておくべきだったと後悔しました。

ゴダールを初めて知った学生の頃から、時代は平和とは反対側へと急ぎ足になっているようにも感じます。偶然の出会いからいち早く世界を知ることもあるのかも知れない・・・。アンテナを高く張り、世界で起きている出来事に、きちんと目を向けていきたいと改めて思いました。


■ジャン=リュック・ゴダール 遺言 奇妙な戦争:https://godard-phonywarsjp.com/







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