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ポスト舞踏派『魔笛』 [ダンス/レビュー]

Sold outになってしまって諦めていたこの公演。追加チケットを手に入れて、なんとかみることができました。敬愛する笠井叡さん、今をときめくキレッキレのダンサー5名が参加するというだけでもどうやって書こうか迷うところなのに、そこにフリーメイソンなど私の知らない世界のことが絡んでいる・・・うわーん、そんなの掘り下げないと書けないじゃーん、と絶句していましたが、このままでは膨大な学習時間を擁してこれっぽっちも進まないので(苦笑)、不完全な理解のままでも、感じたことを書いておくことにしました。


冒頭、カツンコツンと下駄履きの森山、辻本、菅原、島地、大植らが赤い番傘をさしながら客席後方ドアから(3階席からはスタート地点は見えなかったのですが)登場し、舞台へあがってきます。ワイワイガヤガヤと何やら会話しながらはじまるその立ち上がりは、西洋歌劇『魔笛』という雰囲気とは異なり、カジュアルな印象でした。この時の4人の衣装はシンプルに黒いパンツに白シャツだったように思いますが、この不思議な「和テイスト」はラストシーンでも採用されています。その際には歌舞伎役者をイメージさせるようなカラフルな衣装で、しゃべりも七五調でそれぞれ自己紹介をするというものでした。作品全体を通して、5人のダンサーがちょこちょこ笠井さんをユーモアを添えて茶化しているようなシーンが盛り込まれていて、笠井さんと年の離れたダンサーたちがわいわいやっている感があって、楽しい作品だと感じました。

キャッチコピーには「その時、秘密結社は消滅し、すべての人間がフリーメイソンとなる」とあるので、私などはちょっとオカルト的な緊張感を感じていたのですが、フリーメイソンは「会員相互の特性と人格の向上をはかり、よき人々をさらに良くする」ことを目的とした友愛結社(親睦団体)ということらしく、決して怖い組織ではないようです。

笠井さんのオイリュトミーのワークショップや講義などに参加したことのある私には、この作品は笠井さんの人類に対する愛なんだと思いました。当時、モーツァルトがオペラを通じて行ったこと(フリーメイソン内で秘密として共有されてきた人類がより善く生きていくための知見のようなものの公開)を笠井さんはさらに、組織や権威、言語から解放し、ダンスとして体現することで誰にでも享受できるように再編したのだと思います。作品中で笠井さんはちょいちょい、宇宙的な身体論を盛り込んでいたように思います(例えば「逆さ人間」の話。人間を頭から地面に挿すと、そこから人が殖えることが出来るようになるため、人類は男女が生殖行為をする必要がなくなる・・・といったような内容のこと)。黒いマントのような衣装にサングラスといった姿の笠井さんはザラストロという悪者の役割ですが、作品中で人類の救済の叡智を語っているのだとも思いました。ここは5人のダンサーたちが笠井さんを茶化すという演出と同じように、本来の魔笛の設定と逆のような立場をとることで、モーツァルトよりもさらに解放を推し進めるように意識しているのかな、とも思いました。
また、個人的に最も衝撃的だったのは挿入された映像。モノクロの映像で、身体の肘?のクローズアップから、ぼんやりと見えてきたのは上半身裸の老いた女性・・・これがなんと笠井さんの奥様・久子さん(!)と、寄り添うように踊る笠井さんのデュエットシーンでした。もう、この映像から人類が殖えちゃいそうな(表現おかしいかな;)美しく忘れがたい1シーンでしたが、タミーノとパミーナ、パパゲーノとパパゲーナ、どちらのカップルでもない第3のカップルの挿入によっても、笠井さんがこの作品でめざした新たな時代の友愛・解放が示唆されたように思います。


ラストシーン近く、笠井さんが宙づりになるシーンがありました。肩口あたり?にセットされた装具からワイヤーで舞台床と天井の中間あたりにブラーンと吊られていましたが、みている方としては心配で心配で(笑)。うっかり落ちやしないか、ちゃんと息をしているか、誤って変なところで過度な締め付けになっていないかなど、ハラハラです。笠井さんも吊られている間、死んだように動かないので、余計に心配でした(苦笑)。ただ、このシーンはザラストロという古い観念の死だったりするのだろうかとも思いました。確か笠井さんは作品中で「私はもう、ここを離れます!」みたいなことを言っていたので、本気で地球からいなくなるつもりなのかも知れません。え?私、変なこと言い出してますか?!


ロビーで笠井さんの著書『檄文』が限定300部(しかもサイン入り)で、お弟子さんが「笠井さんはもう、ここにすべてを書いたので、今後は書かないと言ってました!一般書店では買えません!」と販売されていたので、脊髄反射的に購入してしまいました(笑)。この本を読みこんで、この記事も書こうと思っていたのですが、まだ時間がかかりそうなので、先に感想的な文章をしたためることにしました。著書にはご両親のことや今回の『魔笛』のことや、日本語についてなど、本作品を深く掘り下げることのできそうな文書の数々が並んでいて、読み進めるのがとても楽しみな内容です。確かに、この著書には笠井叡がぎっしり詰まっているように思います。読破して、また追記・編集するかも知れませんので、その際にはまたお知らせしますね。

作品と著書のダブルワクワク。やっぱり笠井さんは、私の永遠のアイドルですね~。ひゃぁ、たまんないっす。


*文章がとっ散らかってしまい、恐縮です。。



■日時:2024年1月8日(月) 
■会場:神奈川芸術劇場 大ホール
■振付・演出・構成​:笠井叡
https://www.post-butoh-ha.com/
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