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ノクターン 夜想曲 [ダンス/レビュー]

先月になりますが(2024年1月)co山田うんの『ノクターン 夜想曲』を鑑賞しました。山田うんさんの作品はこれまでに何度か拝見してきましたが(2019年の神奈川芸術劇場での公演では出張先の北京からスーツケースを引きずって馳せ参じました:笑)、ゆるやかに手掛ける作品は変容していると感じます。クラシック音楽に振り付けることの多い時期から、土着的なテーマで作品創作を手がけた作品が多い時期を経て、今回は、山田さんご自身の言葉を借りるなら「どのシーンも言葉のない曖昧な形をしていて、意味がわからないと思いますが(当日パンフレットより引用)」という抽象度の高い作品に仕上がっていると感じました。

“夜想曲”という、前時代の「交響曲やソナタといった強い骨格の音楽」とは異なる、甘く夢見るような音楽ジャンルをテーマにしたこの作品は、舞台美術、衣装、照明、音楽も、まるで月明りの下でくり広げられる幻想のような美しさに包まれていました。

作品冒頭、舞台全体は薄暗く10名のダンサーがいる“気配”はあるものの、姿は判然としません。目を凝らしていると、うっすらとダンサーたちの上半身が見え始めます。彼らは全員で“コ”の字を立体的にねじったような線形のオブジェを掲げ持っていますが、ゆっくりゆっくり、オブジェを下ろしていきます。この不思議さとスローな雰囲気は作品全体に共通していると感じましたが、ダンサーたちのキレのある動き・・・全身使ってない筋肉なんてないよね、というくらいに研ぎ澄まされた動きが組み合わさることで、とても心地よいバランスを生み出していたと思います。波、ゆらぎ、スロー、月明り、リリース、コントラクション、目で追えないくらいのスピード・・・もう、みているだけでα波とイマジネーションがあふれ出しちゃいました(笑)。

私たちはコロナ禍によって個人の暮らしや働き方が思いがけない方向へ変化したり、戦争や自然災害で多くの人々が突然日常を奪われる時代を生きることになり、アーティストの手がけるクリエイションによってもたらされる安堵感が大きな力になっていくのかも知れません。

私は『ノクターン 夜想曲』で、日常で崩しちゃったバランスを心地よく整えてもらったなぁ、って感じました。山田うんさんのイマジネーション、これからも注目していきたいと思います。

■上演日:2024年1月19日
■上演会場:まつもと市民芸術館
*世田谷パブリックシアター世界初演、北九州芸術劇場でも上演。
■web: https://www.mpac.jp/event/39713/

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