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アートに出来ること(10) [今だから]

新型コロナウィルスの対応として世界中が“ロック・ダウン”し、今は国と国との間の移動はほとんどなくなっています。ここでいう“移動”は人だけでなく、リサイクルゴミなども含まれます。日本はプラスティックゴミや古着を大量にアジア諸国に“輸出”していますが、それが出来なくなった今、行き場をなくしたリサイクルゴミが国内に多く滞留しているといいます。

そもそも日本がなぜ海外に(リサイクルと名前はついているとしても)“ゴミ”を輸出しているのかといえば、手間のかかるリサイクル処理の人件費が日本では捻出できず、アジア諸国など人件費が安い海外で処理しているからなんですね。言い換えれば「日本はアジア諸国に自国のゴミ処理を押し付けている」という状態なのです。


あいちトリエンナーレ2019のプレ・オープンの日、私は名古屋市美術館の外のわき道を歩いていました。夏の暑い時期ではありましたが、祝祭ムードにあふれた時期だったため、どこか足取りも軽やかでした(笑)。そんな時、ふと目に留まった鮮やかでポップな図柄。よく見ると通路にそって置かれたゴミ箱の袋の模様のようです。私は何気なく近づいていってハッとします。その図柄はアフリカ諸国の国旗だったからです。ゴミが捨てられるのを受け入れる袋・・・それがアフリカ諸国だという明確なアイロニーと強いメッセージを感じて衝撃を受けました。

これは単なるゴミ袋ではなくバルテレミ・トグォ(1967年・カメルーン生まれ)の作品だったのですが、カメルーン出身であるバルテレミは、西洋とアフリカの関係性を背景に作品を作り続けているアーティスト。植民地時代から続く歴史の中で支配的なふるまいを受けていたアフリカ諸国の姿を思い出してみると、この作品のアイロニーは心揺さぶられるものではないでしょうか。


2019年5月、スイス・ジュネーブで開催された国連環境計画(UNEP)の会議ではプラスチック廃棄物の輸出を制限する条約、「有害廃棄物の国境を超える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約」(以下、バーゼル条約)の改正案に日本を含む180カ国近くが合意しています。これにより、遠くない将来、日本はプラスティックゴミの輸出が難しくなることが予測されます。自分たちの手に余るものを他者へと押し付けるという手法は、いよいよ通用しない時代を迎えているのでしょうか。

コロナ禍で自分たちの弱い部分、改めるべき点があぶり出されていきます。これを禍とするか、新しい未来への転換点と捉えるかは私たちの行動で決まっていくのかも知れません。

世界は対等である、そんなことを強く意識しています。



https://www.dailymotion.com/video/x7tzomv

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