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アートに出来ること(9) [今だから]

未知の出来事に、日々いろいろな情報を求めてニュースを見たり、特集番組を見たり・・・だけどそんなことに疲れを覚えはじめたころ、何気なくチャンネルを変えたらNHKの特集番組『ETV特集「緊急対談 パンデミックが変える世界ユヴァル・ノア・ハラリとの60分」』が放映されていました。ほぼ惰性ともいえるような態度でみはじめたのですが(すみません)、途中から引き込まれるようになっていきました。

『サピエンス全史』という話題の著作の作者であるハラリ氏から出てくる言葉の1つ1つは深い洞察に富んでいましたが、中でも感染者や感染が疑われる人の追跡に関する部分には強い警鐘を鳴らしていました。ハラリ氏は「感染拡大防止を理由に一般市民の情報を治安機関に渡してはいけない」と語気を強めます(=感染が治まった後にもその効力を消滅させることは難しく、独裁的な支配へと転身する危険性があるため)。奇しくも日本国内では「検察官定年延長法案」が突然押し通されそうな出来事が起きましたが、権力が力を拡大しようとするときには、やはり大きく注意を払うべきなのでしょう。



あいちトリエンナーレ2019で気になった作品の中に、DNA(究極の個人情報ともいえる)をめぐるプライバシーや監視の問題について議論を促す作品を制作するヘザー・デューイ=ハグボーグ(1982年・フィラデルフィア生まれ)の『Stranger Visions』がありました。この作品は公共空間に残された髪の毛や吸い殻、ガムなどから採取したDNAを分析して特定した人物の顔を3Dプリントしたものですが、最新のテクノロジーを駆使すれば、このようなぞっとする作品までつくれてしまうのです。ゴミの中に紛れた個人情報が、悪意ある誰かの手に渡ることの怖さがそこには感じられました。もし、見知らぬ美術館を訪ねたときに自分が想像したくもない姿で展示されていたら・・・いえ、それがもし悪趣味な個人の範疇を越え、権力を持った治安機関が握ってしまうといったケースが生じれば、時勢次第では酷く悪用される事態だってあり得るかも知れません。個人を特定出来る情報を守るというたしなみは、今という時代を生きる上での新たな常識になるのかも知れません。私たちはこうしたことに意識的になっておく必要があるようです。少々、飛躍した考え方かも知れませんが・・・。


例えば日本という国は、自国民に対し“自粛”を法的に強制することは出来ません。強制力でプライバシーを管理される義務も負っていません。強制ではなく国民の努力によって、コロナ禍の第1波を収めようともしています(先はわからないけど・・・)。個人の自立と個人情報を守るという姿勢は、大切にしていきたい私たちのしなやかな強さだと思います。どさくさ紛れのような動きにはきちんと対応し、しっかりと目を開いていかなければ、とも思います。


https://aichitriennale.jp/2019/artwork/A13.html



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