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アートに出来ること(4) [今だから]

人と人との接触を8割減らす・・・この表現をはじめて耳にした時は我ながら混乱しましたが、その具体的な実現のためのシュミレーションを目にして更に混乱が深くなったのは言うまでもありません。私たちは、なんと多くの人と関わりあって暮らしているのでしょう。人と人との接触を8割減らすことなど非現実的に思えるほどです。

それでも日々、テレビやネットでは、人であふれかえっているのが当たり前だった渋谷や道頓堀などの閑散とした様子が映し出され、自分の感覚と非現実が現実化された世界の乖離に驚かされます。イギリスのロックバンド、ザ・ローリングストーンズが8年ぶりに発表した新曲『リヴィング・イン・ア・ゴースト・タウン』でも、こうした閑散とした街角と自由に外へ出てゆけない現状が描かれています。



“街があるのに人がいない”・・・これまでの世界観からすれば奇妙でしかない今のような景色。でも、それは『あいちトリエンナーレ2019』の作品の中でもみかけていました。袁廣鳴:ユェン・グァンミン(1965年台北(台湾)生まれ)の『日常演習』がそうです。この映像作品の中で、台湾の大都会が空撮された風景に生活の色はなく、街角には誰もいません。ただけたたましいサイレンだけが延々と流れているばかりです。私はこれを目にしたとき、当然のように「人工的な合成映像」だと思いました。現実的な場所に誰もいないということは非現実でしか在りえないと考えたからです。でも、実際は違いました。この映像は現実のもので、1978年より続く「萬安演習」という防空演習の1コマなのです。興味深いと感じるのは、この演習が台湾の高齢者や外国人にとっては戦争の影を感じさせるものの、若者にとっては毎年の見慣れた行事になってしまっているということ。

新型コロナウィルス拡散防止のための外出自粛生活。誰もいない街角が非現実ではなく、ありふれた現実の世界として描かれるとしたら・・・“アフターコロナ”という言葉がささやかれはじめた今、この作品が提示した平和な日常に潜む戦争への脅威は、また新たなる戦いの脅威を孕んだ世界の到来を予感させるように感じます。もちろん、このような予感は外れてしまえと願うばかりなのですが・・・。


https://aichitriennale.jp/2019/artwork/A20.html
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